婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「そうか? 幼い頃から共に過ごしているせいか気にならないな」

「幼い頃? ルーサーはどのような経緯でブラックウェル公爵家に来たのですか?」

「いつだったかははっきりは覚えていないが、母上が俺の友人にと連れてきたんだ。幼い頃は共に学び、成人してからあいつは家令の役割を務めるようになった」

「そうなんですか……」

記憶があやふやなほど昔から一緒にいた。だからメイナードはルーサーを誰よりも信頼しているのだろう。

アレクシアがディナを大切にしているように、メイナードにとってはつらい時期を支えてくれたかけがえのない存在なのだ。

正直、ルーサーの人間離れした能力にはなにかがありそうで気になってしまう。

けれど、メイナードにそれを言う気にはなれなかった。

ルーサーの優れた人間性はアレクシアだって分かっているのだから、気にしすぎるのはよくないのかもしれない。

きっと今は神経質になっているだけなのだ。

その後話題を変えて、少し会話をしてからメイナードは仕事に向かった。

今日は、悪天候の影響で領内の税収が落ちていることについて、対策を検討するそうだ。

アレクシアは、いつも通り作業場に行き、薬を作るつもりでいる。

魔獣の動きは、依然として活発だった。ただ、ある一定のレベルに達するとそれ以上に悪化することはなく、砦の騎士たちでなんとか対応できている。

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