婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
早く原因を知り、取り除かないと落ち着かない。

苛立ったまま城に戻ったイライアスのもとに、数少ない使用人のひとりである侍女長が駆け寄ってきた。

「公爵閣下」

「なんだ?」

メイナードは足を止めて、侍女長の言葉を待つ。

彼女は目が合うとびくりと震え、慌てた様子で目を逸らした。

明らかにメイナードを恐れているのが見て取れる。

その様子に気づいたのか、ルーサーがメイナードに代わって質問をした。

「なにか問題が?」

「はい。オールディス王家より使者がまいりました。公爵閣下に至急お目通りしたいとのことです」

「王家から?」

ルーサーが意外そうに眉を上げる。メイナードは嫌な予感に顔を曇らせた。

「はい。謁見用の部屋でお待ち頂いております」

「分かった。ご苦労だった」

メイド長は用が終わったとばかりに、足早にその場を立ち去る。

メイナードはルーサーと目が合うと、早口で告げた。

「ルーサーはアレクシアのところに行っていてくれ。おそらくイライアスからの使者だ」

ここ最近のイライアスの様子を思えば、アレクシアに接触してきてもおかしくない。

「分かりました。誰も近づかせませんのでご心配なく」

メイナードの不安を察したルーサーは、頼もしい返事をした。

彼と別れ、謁見用の部屋に向かったメイナードを待っていたのは、思いがけない人物だった。

「公爵閣下、お久しぶりです」
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