婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
改まって名前を呼ぶと、アレクシアは首を傾げた。

「はい」

「この件が無事片付いたら、結婚式をやり直さないか?」

「え? どうして?」

瞬きをするアレクシアに、メイナードは気まずい思いで答える。

「夜の礼拝堂での式が怖かったと言っていただろう? 人目に付かないように暗闇での式にしたが、アレクシアの希望はなにひとつ聞いてやらなかった。後悔しているんだ」


あの頃は、いずれ離縁するつもりでいたから大々的にしたくなかったことと、自分の顔を明るい光の下で見せるのが嫌だったから、夜の式を強行した。

しかし、今のメイナードに、アレクシアと離縁をする気はない。

結婚式をやり直すなどおかしなことかもしれないが、ふたりにとって幸せな想い出にしたいのだ。

アレクシアはメイナードの申し出にひどく驚いた様子だが、しばらくすると首を横に振った。

「いいえ、大丈夫です。結婚式をやり直さなくても私は幸せです」

「しかし……」

「それよりも、私は……」

アレクシアはなぜか頬を赤くする。

「どうした?」

「あの、私はメイナード様と……」

言いづらいのか、アレクシアの声は小さくなって消えてしまった。

心配になって良く顔を見ようと見つめれば、アレクシアはますます赤くなって俯いている。

「アレクシ……」

「メイナード様が好きです!」
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