婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「アレクシア様がご指摘された通り、メイナード様の命令で当家は最低限の使用人で運営しています。具体的には厨房にひとり、城の設備維持担当がひとり。私の補佐がひとり。ほかは先ほどご挨拶をさせて頂いた侍女長と彼女の部下ふたりです。私とディナ殿を除いて合計で六名になります」

「ろ、六名?」

アレクシアは衝撃を受けて、目を見開いた。

いくらなんでも少なすぎる。この城の規模なら、百名ぐらいいても不思議はないのに。

「驚かれましたよね」

「はい……あの、それで公爵家としての体面を保てるのですか?」

「メイナード様が人との関わりを好まないのです。逆に公爵の側仕えを希望する者も少ない。奥様はメイナード様の素顔をご覧になりましたよね」

ルーサーの言葉で、彼の顔を覆っていた禍々しい黒い模様を思い出す。

「はい、神殿で」

「でしたらご理解いただけたかと思います」

「……そうですね」

メイナードの素顔は、正直言ってとても恐ろしいものだった。

気の弱い者は直視するのも耐えられないだろう。

そしてメイナードの方も、自分を恐れる者を近くに置きたいとは思わないということか。

(孤独な人……気の毒だわ)

「しかしご心配には及びません。今お仕えしている者はそれぞれ高い実力を持つ者ばかり。アレクシア様が不自由な思いをしないよう努めますので」
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