婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
先ほどから感じていたが、ルーサーはメイナードを少しも恐れていないようだ。

主君相手としては気軽な口調で、メイナードの方もそれが当然と受け止めている。

(私が思っている主従関係とは違う)

「ではアレクシア様にお伺いします。魔獣が消えたというのは間違いありませんか?」

「はい。一瞬で燃え尽きたような消え方でした。ディナはどう見えた?」

「私もそのように見えました」

お茶を淹れ終えたディナは、そう答えてからアレクシアの背後に控える。

「燃え尽きた……そんな話は初めて聞きますね。メイナード様はどうですか?」

ルーサーがメイナードを見遣った。

「ああ、俺も初めて聞く話だ……そのときの様子を初めから詳細に話してくれないか?」

メイナードはルーサーに相槌を打ったあとアレクシアに身体を向けた。

仮面の向こうの黄金の瞳がアレクシアを真っすぐ見つめているのに気づいて、鼓動が跳ねた。

「あ、あの……ディナと庭に出て少し歩いていたら急に風が吹いて、帽子が飛んでいってしまったんです。そのときに空から大きな鳥が近づいてきているのに気づいて……」

アレクシアは尋ねられた通りに、事細かに語る。

黙って聞いていたメイナードだったが、治癒魔法について口にすると動揺したように肩を揺らした。

ルーサーも驚いていたようで、椅子から腰を浮かす。

「アレクシア様は治癒魔法の使い手なのですか?」
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