婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「はい。ご存知ありませんでしたか?」

メイナードもルーサーの驚きようを見るとそうとしか思えないが、結婚相手についてまるで調べていなかったのだろうか。

ルーサーは浮かしていた腰を下ろし、戸惑った様子でメイナードに視線を送った。

「あなたについては、イライアス王太子とアークライト侯爵家から身上書を受け取っているが、治癒魔法については触れられていなかった」

「……そうなんですか」

(私を嫌っている生家とイライアスが用意した報告書など、ろくなことが書いていなそう。それに旦那様がそれ以上のことを、ご自分で調べなかったのは、私に関心がないからね)

やっぱり愛のない結婚なんだと実感して、塞いだ気分になった。

「治癒魔法をかけた途端に消えたんだな?」

「はい」

「見せてもらえるか?」

「治癒魔法をですか? はい、大丈夫です」

アレクシアは右手を翳し魔力を発現させた。光魔法特有の白金の輝きが溢れる。

「これは……素晴らしいですね。希少な光魔法な上に魔力量も多い」

ルーサーが感心したよう目をアレクシアに向けた。

「王太子と侯爵家は、なぜ彼女の魔力について触れなかったんだ?」

メイナードがぽつりと呟いた。それは独り言が思わず漏れたかのようなものだったが、それだけ彼が驚いているということだろう。
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