政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
 うとうとと現実と夢の間を行ったり来たりしながら柚子はぼんやりと翔吾との結婚生活を終わらせることを考えていた。
 もうすべてが手遅れだ。
 今さら、なにをどう言い訳しても、すべてが遅い。
 夫婦の間に愛情はなくとも、信頼で結ばれていればやってける可能性はあるだろう。
 でも翔吾が真実を知ったらもうその可能性はゼロになる。
 原因を作ったのは自分だから、柚子自身がつらい思いをするのは仕方がない。
 でも翔吾はどうだろう。
 ちゃんと信頼関係を築ける相手と結婚するべきなのではないだろうか。
 これから続く長い長い人生を柚子など過ごすのではなく……。
 にゃーん。
 母のところへ行ったはずのクロがベッドへ戻ってきて、柚子に寄り添うように丸まっている。
 その温もりを感じながら、柚子は眠りに落ちていった。
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