政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました

　やっぱり彼は柚子と本当に家族になろうとしてくれているのだ。
　翔吾の手の温もりが繋いだ手から柚子の胸に、伝わってくるような心地がした。
　＂嬉しい＂と＂申し訳ない＂が入り混じったような複雑な温かさだった。
　もうすぐ終わってしまう夫婦なのにはじめからやり直すようなこと、本当はまったく必要ない。
　でも最後に思い出を作るくらいはいいんじゃない？
　柚子の中のずるい自分が囁いた。
　まるで愛し合って結婚をした夫婦のように、一日を過ごしてみたい。
　そしてその一日の最後に本当のことを告げて、すべてを終わりにしよう。
「柚子？　どうだ？」
　柚子はこくりと喉を鳴らして翔吾からの問いかけに、ゆっくりと頷いた。
「臨海公園ね、うん、楽しみ」