政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
幸せな出産
 暖かい午後の日差しが差し込むリビングの、一番いい場所を陣取って、クロが四匹の子猫にお乳をあげている。
 柚子はソファで翔吾に包み込むように抱かれながらその幸せな光景を眺めていた。
 翔吾と柚子の気持ちが通じ合ってから一カ月が経ったある日、クロは無事に子猫を出産した。
 猫のお産には立ち合ったことがないと、不安でいっぱいだった柚子だけれど、結論からいって柚子は特になにもすることはなかった。
 したことといえば、クロがお産するのに最適な場所を整えたくらいで、あとはクロ自身が自分ですべてのことをやったのだ。
「クロはすごいなぁ、誰にもなにもおしえてもらわなくったって、ちゃんと赤ちゃんを産んで育てられるんだもんね」
 柚子はそう呟いて、手にしてるマタニティ雑誌を広げた。
「私なんか、まだまだ不安でいっぱいなのに……」
 クロの妊娠を知ってから柚子は猫のお産についてひと通りのことを勉強した。
 そして無事にそのお産が終わった今、今度は自分のために人間の出産について勉強する日々である。
 そしてそれについては、知れば知るほど不安になっていくばかりである。
「大丈夫だ。柚子には俺がついてるじゃないか」
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