下弦の月
誤解が解けて迎えた休み明けに、




健ちゃんにちゃんと自分の気持ちを伝えた。








「そうか…わかった。月香があいつを選ぶなら諦めるよ。」






素直に理解してくれた健ちゃんは、




私の知ってる優しい顔だった。







大島さんは、人事異動になり…経理部に行く事になった。





何でも自分から異動を申し出たらしい。












それから、数日後の土曜日。





柊輔さんと、彩芽と淳平さんの店に来ていた。









「本当に…土方さんの生まれ変わりなんだな。」







嬉しそうに話す淳平さんに、柊輔さんは記憶の範囲内で気になっているらしい事を口にした。







「あれから、お前は…どうしたんだ?歴史上だと上野で戦死した事になってるよな?」








「ああ…実はもうひとつの説が正しい。満州に渡ったんだ。」





瀕死だった所を松本良順先生に助けられたらしい。




そして、満州で生涯を終えて……高橋淳平として生まれ変わった。





これも本当に何かの縁なのかもな。





呟くように言った柊輔さんに、私や彩芽も頷いて。





淳平さんが、白い封筒を私達の前に置いた。







「私達の結婚式の招待状よ。」





彩芽が頬を赤らめながら、そう言ったから。





柊輔さんは、驚いた様子だったけれど。





おめでとう。と祝福の言葉を、二人の経緯を聞いて口にした。







「まだ、安藤さん達は…結婚しないのか?」





淳平さんに聞かれて、赤面する私を他所に。





「考えてないこともないよ。」





さらっと答えた柊輔さん。





思いも寄らない言葉だったから、嬉しくて。




だけど、照れくさくて目線は自然と下を向く。






「よかったね。」





そんな私を覗き込んで、彩芽が頭を撫でてくれた。





近いか遠いかはわからない。



だけど、いつの日か本当に叶ったらいい。
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