下弦の月
山崎さんの水葬が行われた後、





甲板に一人で立っていた土方さんは……






私の肩を抱いて。






「もう、刀や槍の時代じゃねぇんだな。新型兵器に新しい着物、ついに…来ちまった…武士が必要とされない時代が…」






なんて嘆くから、







「武士が必要とされなくても、武士の魂はずっと根付いて行きますよ。誰が何と言おうと…新撰組の皆は本物の武士だと私は信じています。」






そう、私が新撰組の皆と過ごした日々で感じた事を、




私なりの言葉で伝えると、僅かに微笑んで。







「そうだな…江戸に戻ったら、一から喧嘩のやり直しだ。」






着いて来いよ。






そう、言って……私の唇に唇を重ねた。






土方さんとこうして、唇を重ねるのは後どれくらいだろうか。
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