下弦の月
《土方 歳三》



珍しく巡察に出た時、見つけた髪結い屋。



人に髪を弄られるのは苦手だが、たまには、気分転換に髪を誰かに結って貰うのも悪くないかと。




後日、訪ねて見ると。


別嬪の気立てのいい女が顔を出した。


それから、腕の良さもあって通うようになった。


なぜか、幹部連中も巡察の途中で俺が入って行くのを見かけたらしく……通うようになっていた。



その女=八重が助けた女を一目見た時。




なぜか、胸を針で刺されたような痛みが走った。


その痛みは、今まで感じた事のない痛みで。


八重に頼まれて、八重の店に連れて行くまで続いていた。


八重が敷いた布団に寝かせ、一旦は屯所に帰ったが。



どうも気になって、また裏口から勝手に入って様子を見に来ていた。



名を聞いた時は、綺麗な顔に似合いの名だと思った。



瞳が合わさって、月香に見つめられた時は。


あまりに澄んだ濁りのない瞳から視線を逸らすことは出来ず……照れ隠しだろう。






俺の顔に何か付いてるか?と、聞いていた。






帰りの道中に、また逢えるだろうか。


ふと、思い……空を見上げていた。




そう、思っていた張本人が、今…八重と共にやって来て、俺の隣に座っている。
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