下弦の月
目映い光りに包まれて。




あの時と同じように、ゆっくり目を明ければ、






「月香…大丈夫?」






彩芽の心配そうな声が、私の耳に響いた。






戻って来たんだって安心感と、分身を失ったような物足りなさを感じている。







「うん……大丈夫。ここ…どこ?」






周りを見渡せば、見慣れない天井に、



見慣れない布団、和室。







「古道具屋さんの家だよ。月香が、意識を失なって倒れたから…お婆さんが布団を敷いてくれて寝かせて貰ったの。」







「そっか……ところで私……どれくらい寝てた?」







「3時間くらいだよ。」







私がタイムスリップした5年間は、たったの3時間だった。




まるで、長い長い夢を見ていたみたい。







だけど、私の身体には歳三さんの温もりが残っていて。



鮮明に耳は、歳三さんの声を覚えてる。







「ねぇ……彩芽…私が今から話すこと、聞いてくれる?」






起き上がり、全てを彩芽に話した。




「…月香…実は私ね、前世の記憶を持って産まれたみたいなんだ。前世で私は、髪結い屋をしてたの……それで未来から来た女の子を助けた、その子の顔までははっきり覚えてないし…名前も覚えてないんだけど…その子は別れ際に“八重とは私の時代では、もう友達のような気がする”って言ったんだ。その子は、月香だったんだね。」







「…嘘…彩芽が八重の生まれ変わり?」






「そうだよ、月香。」






なんか、照れくさいような…嬉しいような気持ちで。







「やっぱり、友達だったね。」






頷いてくれた彩芽に抱き付くと抱き締め返してくれた。








それから、布団を畳んで。




お婆さんに御礼をして、着物を返して。




家路に着いた。
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