下弦の月*side story*
穏和で、キリッとした眼差しの中の優しい瞳。




豪快な、皆の道標のような明るい笑顔。




八重、と呼ぶ太い張りのある声。






近藤さんの懐かしい全てを思い出して、溢れて止まらない涙は嗚咽交じる度に。




原田さんが抱く腕の力は強まって、温かくて。




寂しさも、悲しみも全てを受け止めてくれているみたい。




漸く、泣き止んだ私に。





「俺は、これから彰義隊って連中と共にすることにしたんだ。」






思いもよらぬ事を口にした。




俺らは、ではなく、俺は、だから。






「永倉さんは?」





「新八とは別れた。あいつと仲が良い額賀とは、合わなくてな。新八に迷惑をかけちまうから。」






「そうですか…無事を祈ってますよ。」






「ああ。八重も元気でな、総司によろしく。」






私の頭を撫でながら、竹の葉の包みを渡して。






「総司の好物の団子だ。食わせてやってくれ?」





そう言って、背中を向けて去って行った。




あの広い背中、何度も何度も私に元気をくれた。




斎藤さんに会いたくても会えない時。




山南さんが亡くなった時、平助くんが亡くなった時。





寄り添わせてくれた背中。





もう見ることがないような気がして、見えなくなるまで見つめていた。





いつのまにか、溢れた涙を拭って。




邸内に戻ろうとした時ー……。






“八重、もう少し後で必ず迎えに行く。待っていてくれ。”






居るはずのない、斎藤さんの声が風に乗って聞こえた気がした。





私を遠く離れた地で想ってくれているのですか?





それだけで私は、嬉しいです。
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