下弦の月*side story*
「着いて来い。」





土方さんに手を引かれて、



連れて来られたのは屯所の入口の左側にある、鐘の所だった。








「ここからだと少しは月が近くに見えないか?」







「そうですね。素敵、真ん丸で。」







「ああ。ここはな、原田のお気に入りの場所なんだ。怒られちまいそうだな。」








口角を上げて、微笑んだ土方さんが月に照らされてあまりに、妖艶過ぎて。







「今日は大丈夫ですよ、今頃は腹おどりの最中です。」








瞳を逸らして月を見上げて言うと、







そうだな、と。







「お前の名を初めて訊いた時…月みたいに綺麗で合ってるなって思ったんだぜ。」








さらに顔が熱をもつ。





どう答えたらいいのか、わからず。







「ありがとうございます。そんなことを言われたのは初めてです。」






そう返すと、土方さんの腕が肩に回されて。





引き寄せられて。







綺麗だ。




赤い顔を覗き込まれて、耳に大好きな声がそう、響いた。




顔を上げることなんて出来ない、うつ向いたままの私の額に、柔らかい土方さんの唇が触れた。
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