空を舞う金魚

「居なくなる時は、ちゃんと言う。……だから、俺についてきて欲しい」

駅へと続く道の途中、夕刻の慌ただしい雑踏の中。それでも渡瀬は真っすぐに千秋を見てそう言った。

「……え? な、なに? ついて来てって、どういう……、こと……?」

急に改まった渡瀬に狼狽した千秋に、渡瀬は片方の口端を上げた。

「……ドイツに出向が決まってる」

「……、…………」

(……え……っ?)

鼓膜に響いた声は受け入れられるけど、意味を聞き入れられなかった千秋は、聞こえた言葉を問い返した。
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