空を舞う金魚

店の外に着けたタクシーに眠ってしまってる綾城を乗せると、砂本も一緒に助手席に乗り込んだ。

「砂本さん、すみません。私一人ではマンションの部屋まで連れていけないし……」

「最初からそのつもりだったよ、気にしないで。こういう時には堂々と男を頼って欲しいね」

滝川にそう言うと、頼りになるなあ、と微笑まれた。

窓に小さな雨粒が付いている。今日は天気も良くなかったし、霧雨が降り始めているのかもしれない。

少し長引いた打ち合わせの疲れを背中ににじませて背凭れに凭れると、後部座席から滝川の抑えられた声が聞こえた。

「……砂本さん。千秋ちゃんの事、どうするんですか……?」

「どうする、……って?」

少し笑いを含ませて応えると、茶化さないでください、と思わぬ真剣な声に切り返された。

「付き合ってるんでしょう? どうにかしてあげてください。千秋ちゃん、なんかおかしかったです」

滝川が砂本と綾城の関係を知っていたのは知らなかった。

「……いや、正確には付き合ってない。返事が綾城さん側で保留のままなんだ。綾城さんが滝川さんに、俺と付き合ってるって言ってたの?」

そうだったら嬉しいが、滝川は、そうですか、と声をトーンダウンさせた。
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