空を舞う金魚

「うっわ。どうしたの、綾城さん」

砂本が店に着くと綾城が部屋の奥のテーブルに突っ伏していた。テーブルには明らかにソフトドリンクじゃないグラスが並んでて、どうしてこうなったのかは直ぐに分かった。

「何時もウーロン茶じゃないか。どうしちゃったの……」

席に近寄って肩を揺さぶっても応答らしい応答はない。滝川に説明を求めても困って肩を竦めるばかりだ。

「滝川さん、綾城さんのおうち知ってる?」

「知らないんです……。だから今夜は私の家に泊めます。女同士ならある程度迷惑の掛けどころも分かるだろうし、なによりこの状態の千秋ちゃんを一人にしておけません」

頼もしい言葉に、タクシーを呼び寄せ車内まで運んでいくことを約束していると、ざわめいていた集団の中から渡瀬が現れた。

「砂本さん。後でお時間頂けませんか?」

そう言う渡瀬は強い瞳で砂本を見た。綾城が酔いつぶれた理由が、なんとなく予想が付いた。

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