空を舞う金魚

「すみません、お待たせしました!」

約束の時間までまだ十分もあったのに、砂本さんは約束の場所に居た。改札を潜ったところで砂本の姿を見つけた千秋は、焦って彼のところに駆け寄った。

「ああ、気にしないで。気持ちが逸っちゃって、早く着きすぎちゃったんだ」

そう言って照れ笑いする砂本は、今日も親しみやすい笑みを浮かべている。ウオッシュブルーのデニムにベージュのサマーニット。インナーのカットソーの裾とスニーカーが白で、着こなしが爽やかだ。

千秋も男の人とお出掛けということで、メイクを手持ちのものの中で一番明るめにしてみた。裾レースの綿ブラウスにライトグリーンのプリーツスカート。あまりデート服と言われる洋服を持ってないので、普段出掛けるときと同じような服装だ。

砂本は、そんな千秋を見つめると、ふわりと微笑った。

「な、なにか、おかしかったでしょうか……」

男性とデートなんて初めてだから、勝手が分からなくて困る。砂本さんはそんな千秋の勘違いに気付いて、ああ、違うよと、照れ笑いした。目元がやさしい。
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