空を舞う金魚
(何を、言うつもりだったの……? 私……)
千秋をあの教室に置き去りにしたまま、渡瀬は大人になった。千秋はあの卒業式のあの教室に留まったままだ。
教室の埃のままだった千秋。水槽の底で動かずにいた千秋。手を取って明るい空を見せてくれようとしているのは砂本ではないだろうか。
「……私……、……砂本さんが、そんなに渡瀬くんのことを、……気にする必要は、……ないと、思います……」
千秋の言葉に、砂本はぱちりと瞬きをして、そして、手を組みなおした。
「それは……、……どうして?」
どうしてと聞かれても、まだ応えるだけの心が決まってない。でも、渡瀬を気にすることは、ないと思う。