空を舞う金魚
お茶を終えると、もう日が傾いていた。こんなに夢中で買い物をしたりおしゃべりしたりしたことは、学生時代も含めてあまり経験がなかったので、滝川が気さくに誘ってくれる人で本当に嬉しかった。滝川は駅まで来ると、ふと思い出したようにこう言った。
「折角ここまで出てきたから、私、明日の朝のパンを買って帰るわ。向こうに美味しいパンのお店が出来たのよ」
「えっ、私も行きたいです」
「おっ。じゃあ、一緒に行こ」
既に改札を潜ろうとしていたが、来た道を逆戻りして、シティホテルやテナントが入るようなビルが立ち並ぶエリアに来た。駅にも近いこともあって、それぞれのビルに出入りする人も多い。
「結構近くなのよね。その黒いビルの一階の……」
滝川が指差した目の前のビルの一階に、黒い板に金茶色の文字で店名が描いてある看板を掲げている。その店の入っているビルの奥にある、名の通ったシティホテルの入り口の自動ドアを今から潜ろうとしていた人に見覚えがあった。