偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
私を選んだ理由が外見だったとしても、今の彼ならきっと私自身を見てくれている。

名前を呼び間違われたわけでもないし、今は、大事にしたくない。

想い人がいる白坂さんが今後も頻繁に彼の前に現れるわけじゃないのだから。

大丈夫、私たちの関係は揺らがない。

すう、と小さく深呼吸をして、動揺をゆっくり抑えていく。


「きちんと副社長に尋ねるべきよ。憂い事は入籍前に解決しておかなくちゃ、ずっと引きずるわよ」


親友の厳しい忠告に素直にうなずく。

入籍したらもう、逃げられない。


でも私は本当に逃げ道がほしいの?


だって入籍したら私は彼の妻になれる。

櫂人さんを独り占めできる。

そんな風に考えてしまう私はとてもズルくて卑怯だ。

このまま事を荒立てずに済ませたいと願ってしまう自分を否定できない。


だって、好きだから。

どうしても一番近くにいたい。

私さえ気にしなければ、黙っていればこれから先もずっとこの位置にいられる。
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