偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
「……あなたって、栗本副社長から伺っていた通り本当にお人好しね。騙されたって怒らないの?」


「もう過ぎた話ですし……最初は戸惑って怒りましたが、今は出会いのきっかけをくださった白坂さんに感謝しています」


「……栗本副社長があなたを大切に想う気持ちがわかるわ」


白坂さんはそう言って目を細める。

上品な光沢のあるベージュのドレスを身に着けた、白坂さんは、どこから見ても完璧なご令嬢だ。

もちろん立ち居振舞いも美しい。

そんな人と私は顔の造作こそ少し似ているかもしれないが、本質は全く違う。


「上田さんって確か栗本副社長の婚約者候補だった方よね。大方、あなたへの嫉妬とやっかみでしょう。彼女は婚約を熱望していたと専らの噂だったし、気にしないほうがいいわ」


白坂さんの優しい気遣いが嬉しいのに、胸が苦しくなる。

非の打ちどころのないこの人に私は到底かなわない。


「あの、さっき櫂人さんに頼まれたって……」


ふと思い出して尋ねる。


「ああ、あれは口実よ。ここに入っていくあなたを上田さんが追うのを見かけて、嫌な予感がしたから」


「そうだったんですね、ありがとうございます」


「いいえ、それよりも元お見合い相手の私が出席して、不愉快じゃない? 栗本副社長にその旨を伝えたんだけど、お互いの関係は良好だと周囲にアピールしたほうがいいと言われて……」


白坂さんが申し訳なさそうに告げる。


「私は大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」


返答する口元が僅かに強張る。
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