偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
彼の行動と判断はきっと正しい。

婚姻問題で揉めていると邪推されると大変だ。

けれど白坂さんの出席により様々な懸念が払拭される。

そこをきちんと理解している白坂さんはさすが名家のご令嬢だ。

しかも私の窮地をも鮮やかに救ってくれた。

自分のことだけで精一杯になっている私とは全然違う。


「斎田さんのお話は栗本副社長に会うたびに、よく伺っていたの。なので勝手に親近感を感じていて……馴れ馴れしかったかしら」


「とんでもないです」


「私たちが似ているって栗本副社長に言われたけれど、斎田さんのほうがずっと可愛らしいわ」


フフッと声を漏らす白坂さん。

その言葉をうまく聞き流せない。


白坂さんと櫂人さんは、会っていたの?


似ているって、やっぱりずっと思っていたの?


答えの出ない疑問がぐるぐると頭の中を駆け巡る。


「あ、の……私そろそろ戻ります」


掠れた声でなんとか言葉を絞り出す。

震えそうになる唇をギュッと噛みしめる。

心の中がざわめいて、うまく感情を表現できない。


本当は白坂さんを今日のパートナーにしたかった?


私はやっぱり身代わりだったの?


やめなさい、櫂人さんを信じると決めたのでしょう?


もうひとりの私が必死に警告する。

それでも胸の奥深くに根づいた不安と疑問はなかなか消えない。
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