偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
その後、自宅に戻った私たちはまるで神聖な儀式のように何度もキスを交わしてお互いの体温を分け合った。

彼は私の全身に触れてキスの雨を降らせながら、何度も私に愛を囁いてくれた。

そのすべてが愛しくて嬉しくて涙が止まらなかった。

あれほど悲しい想いが充満していた部屋は今、とても幸せな空気に満ちている。



翌朝、私たちはふたりで白坂さん、蘭子さん、貴臣くんに話し合った結果を報告した。

三人とも呆れたような口調ながらも、私たちの仲を心から祝福してくれた。

ちなみに蘭子さんは私の両親に今回の結婚についてずいぶん頼まれていたという。

雇用主でもあり私をよく知る保護者のひとりとして成り行きを見守っていたのよ、と改めて告げられて驚きを隠せなかった。

櫂人さんが危惧する貴臣くんの想いについては触れずにいる。

私自身は貴臣くんを兄以上の存在とは思えず、彼も私にそういった態度を望んでいない気がしたからだ。


それから両家の両親にも今回の件をきちんと報告し、改めて結婚の許しをもらった。

当初私の母は大企業の御曹司に私が嫁ぐのをずいぶん心配していたそうだ。

けれど忙しい日々の中で両親のもとへ足繫く通い、私への真摯な想いを伝え続ける彼の姿に心打たれたという。

さらに彼は兄のもとにも説明に訪れてくれていたらしい。

事の次第を伝えた兄から、改めて『よかったな、おめでとう』と祝福の言葉をもらった。



櫂人さんと貴臣くんはパーティーなどで顔を合わせるたび、遠慮のない物言いでやりあっている。

けれどどこか楽しそうで、ふたりは気が合いそうだとひそかに思っている。
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