偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
リストの確認ができたのは、五月に入り三日ほど経ってからだった。
彼の帰宅が深夜に及んだうえ、私が早番続きで生活がすれ違っていたせいもある。
メッセージで確認してもよかったが、気乗りしなかった。
最初から顔を合わさない行動をとると、今後もそうやって逃げ癖がつきそうな気がしたからだ。
彼は毎日、予定帰宅時刻を教えてくれる。けれど食事の有無など細かい内容には触れていない。
今日は午後九時前には帰る予定と言われていたので、仕事を終え帰宅した私は食事の準備をしていた。
作るのはごく一般的な家庭料理で、今日のメニューはビーフシチューだ。
もし急な予定変更で彼の帰宅が遅くなったり、食事は不要と言われても冷凍保存ができる。
せっかくだからとご飯も炊いていた頃、玄関ドアが開く音がした。
廊下を抜けて玄関に向かうと、疲れを滲ませつつも相変わらず整った面立ちの婚約者の姿があった。
「お帰りなさい」
「……ああ」
掠れた声と淡々とした表情に一瞬話しかけるのを躊躇う。
「お疲れ様、夕食はもう済ませた?」
おずおずと声をかける。
「いや、まだだ」
「じゃあ一緒に食べない? ちょうど作っていたの」
「作ったって……お前が?」
心底驚いたように櫂人さんが目を見開く。
「口に合うかはわからないけど」
「ああ、それでさっきからいい匂いがするのか……ありがたいな」
フッと眦を下げた彼の優しい声が胸の奥に響く。
彼の帰宅が深夜に及んだうえ、私が早番続きで生活がすれ違っていたせいもある。
メッセージで確認してもよかったが、気乗りしなかった。
最初から顔を合わさない行動をとると、今後もそうやって逃げ癖がつきそうな気がしたからだ。
彼は毎日、予定帰宅時刻を教えてくれる。けれど食事の有無など細かい内容には触れていない。
今日は午後九時前には帰る予定と言われていたので、仕事を終え帰宅した私は食事の準備をしていた。
作るのはごく一般的な家庭料理で、今日のメニューはビーフシチューだ。
もし急な予定変更で彼の帰宅が遅くなったり、食事は不要と言われても冷凍保存ができる。
せっかくだからとご飯も炊いていた頃、玄関ドアが開く音がした。
廊下を抜けて玄関に向かうと、疲れを滲ませつつも相変わらず整った面立ちの婚約者の姿があった。
「お帰りなさい」
「……ああ」
掠れた声と淡々とした表情に一瞬話しかけるのを躊躇う。
「お疲れ様、夕食はもう済ませた?」
おずおずと声をかける。
「いや、まだだ」
「じゃあ一緒に食べない? ちょうど作っていたの」
「作ったって……お前が?」
心底驚いたように櫂人さんが目を見開く。
「口に合うかはわからないけど」
「ああ、それでさっきからいい匂いがするのか……ありがたいな」
フッと眦を下げた彼の優しい声が胸の奥に響く。