丸い課長と四角い私
【反対に、あなたが人に気を使うとこなんて、見たことないですけどね】

【君、眼鏡の度があってないんじゃないかい?
新調した方がいいかもね】

【そっくりそのままお返しします】
 
少し開いた間に、奴がくすくすおかしそうに笑っているのが容易に想像できる。

ムカつく、ほんと。

【とにかく。
本でも読んで待ってるから。
君は気にしないでさっさと仕事を片づけなさい】

【云われなくてもそうします】
 
既読がついたことを確認して、画面を閉じる。

……なーんですぐ、あんなことを云ってくるかな。
返す私も私だけど。

思わずくすりと声が漏れて、自分が笑っていることに気がついた。

……笑うんなんて久しぶり、だな。


翌日は蔵田課長を少しでも待たせたくなくて、お手洗いに立つ間も惜しんで仕事をした。
やっぱり終わったのはかなり遅かったけれど、それでもいつもよりは早く終わらせることができた。

指定のコーヒーショップでは、蔵田課長は宣言通り、本を読んでいた。

……細い銀縁の、ハーフリムの眼鏡。
オールバックにしている黒髪は、時間が遅いせいか、少し乱れている。
本に注がれる、真っ直ぐな視線。

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