丸い課長と四角い私
「いいよ、鈴木くん。
佐々くんの面倒は僕が見るから」

慌てて立ち上がった鈴木くんを制したら、おそるおそる聞いてきた。

「……その。
蔵田課長と佐々さんって、もしかして」

「ああ。
僕たちは付き合ってるよ」

……嘘ー!?
……いつから!?
……なんでー!?

そんな声が飛び交っているが、無視して宴会場を出る。
ナルはそんな騒ぎにも気付かないほど、ぼーっとしている。

「くらたかちょー?
いいんですか……?」

「いいよ、別に」

とろんとした目で聞いてきたナルにちゅっと口づけを落とすと、嬉しそうに笑って頬をすり寄せてきた。

部屋に戻り、ナルに水を飲ませる。
同室の、十ほど年上の三浦課長はほかの麻雀好きの社員と徹マンのはずだし、第一、さっきのあれで部屋に戻る勇気があるとは思えない。

ブブブッとテーブルの上で不快な音を立てて震えた携帯を見ると、案の定、三浦課長から。

【俺、今晩は部屋に戻らないから。
ただし、慰安旅行なんだから程々にな】
 
余計なお世話だ、思わず画面につっこみを入れる。
ナルはまだ、ぼーっとゆらゆら揺れていた。

「くらた、かちょう……?」


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