丸い課長と四角い私
「ん?
もうふたりなんだから、いつも通りでいいよ」

「蔵田課長は大阪に行っちゃうんですか……?」

自分も水を飲もうと、冷蔵庫から取り出したペットボトルが大きな音を立て落ちる。
ゆっくりと振り返ると、泣き笑いで首を傾げている、ナル。

「……ああ」

……聞いていたのか。
さっきの話。

「じゃあ。
……もうお別れ、ですか?」

「は?」

ナルの云っている意味が理解できなくて、まじまじと顔を見てしまう。

「遠距離だってできるよね。
福岡と大阪なら、新幹線ですぐだし」

「きっとすぐに面倒になります」

「そんなことあるわけない」

「あります」

ナルは口をへの字に曲げて、泣くのを我慢している。

……というか。
なんでそんなに否定する?

「休みごとにナルさんに会いに行くよ。
ナルさんも淋しくなったら来ればいいよ」

「莫迦なんですか?
蔵田課長は。
新幹線ですぐでも、そのためには余分なお金が必要なんです。
負担に感じるに決まってます」

「ナルさんに会うのに、負担とか思わないよ」

「なります、絶対」

忘れていたわけじゃない、ナルとよく、意見が食い違うこと。
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