丸い課長と四角い私
でも、いつもどちらかが折れてうまく合わせていた。

……でも。
今回だけは。
俺が折れるわけにはいかない。

「なんでそんなこと云うの?
やってみなきゃわからないよね」

「やってみなくてもわかります」

「やってみたこともないのに、どうして云い切れるの?」

「だってさっき、木山さんが、『あーあ。ご愁傷様』って」

「は?」

さっぱり意味がわからない。
どうしてそこで、木山の話が出てくる?

「蔵田課長最近、彼女できたっぽいけど、これでダメになるだろうな、って」

「いや、だからなんで?」

木山に気付かれていたこと自体なんか嫌だが、しかしそれがなんでその結論になる?

「木山さん、今年こっちに赴任してきて、すぐに三年付き合ってた彼女と別れた、って。
何回かは会いに行ったけど、交通費、莫迦にならないし、面倒になって行かなくなった、って。
それで三ヶ月もしないで別れた、って」

……ああ。
みんなに話、聞こえていたのか。
下部部長、声でかいもんな。

「それは木山の話だよね。
僕はそんなことしない」

「なんでそんなこと云い切れるんですが。
わからないじゃないですか」

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