丸い課長と四角い私
「いいでしょ、別に」

「僕にはなにが面白いんだか、さっぱり理解できないけど」

呆れている蔵田課長の手には、分厚い洋書。
別々に会計をすませて店を出る。

「それで?
今日はなに食べる?
最近、夏バテ気味だしさっぱり寿司とかがいいかな」

「え?
夏バテにはやっぱり肉でしょ、肉。
焼き肉がいいです」

「は?
この暑いのに焼き肉?」

「寿司とかじゃ元気出ませんって」

じーっと二枚のレンズを挟んでにらみあう。
しばらくして蔵田課長がはぁっと小さくため息をついた。

「……焼き肉、ね」

「さっさと行きますよ、さっさと。
おなか、ぺこぺこなんですから」

足早に歩き出した私に、蔵田課長が慌てて後を追いかけてきた。



「で?
今月は元気そうだね」

「まあ。
誰かさんが無理難題押しつけてくる以外は、別に。
……すみませーん、生ひとつ」

ジョッキを一気に空けて、追加注文。
蔵田課長とふたりで入ったのは、半個室の焼き肉店。
云っておくがこれはデートではないし、私と蔵田課長は付き合っていない。
仕事の一環、なのだ。


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