丸い課長と四角い私
泣くときはいつも、眼鏡が汚れることなんてかまわずに、額をこすりつけてくる。

「第一、嘉規さんが、いなかったら、誰が私に、息抜きさせて、くれるんですか」

「そうだね」

撫でる髪は絹のようになめらかで心地いい。
次第に泣き声が小さくなり、やがて止まってしまっても、ナルは俺の浴衣を掴んでじっとしている。

「鳴海。
……結婚、しよう」

「は?」

俺を見上げたナルの顔は、驚きで固まっている。

……けれど。

「だから。
……鳴海、結婚しよう」

「え?
は?
いや、だから、はいーっ?」

ナルは完全に動揺している。
確かに、唐突すぎるとは思う。

……でも。

「確かにきちんと付き合って三ヶ月だけど。
でも、その前の一年があるし。
それほど急じゃない。
結婚すれば同じ支社に転勤も可能だし、ナルさんがいいなら仕事を辞めてもらってもかまわないから」

「あの。
嘉規、さん?
そんな大事なこと、こんな簡単に決めてしまっては……」

「簡単じゃないよ。
ナルさんとはいずれ、結婚したいと思ってた。
それがちょっと、早まっただけ」

視線を彷徨わせるナルの、顔にふれる。
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