丸い課長と四角い私
「別に酔わせてどうこうとか考えてないよ。
そこまで女に飢えてないし。
ただ、酒が入った方が、話しやすいこともあるよね」

「……余計なお世話です」

蔵田課長の意図することに気がつき、ジョッキに口を付ける。
それからあとはふたりともずっと無言で、ちびちびビールを飲んで、出てきた料理をつまんでいた。

やっと一杯空いたころ、目の前が滲んで見えた。

「……別につらいとか、思ってないですし」

「うん」

「……ひとりでだって、大丈夫だし」

「うん」

「……別に全然、気にしてないし」

「君のそういう強がってるとこ、嫌いじゃないけど。
たまには息抜きしないと、壊れちゃうよ?」

気がついたら。
蔵田課長が隣に座っていた。
そっと涙がたまった眼鏡をはずされたと思ったら、ぎゅっと抱きしめてきた。

「……セクハラ、です」

「そう?」

自分の言葉とは裏腹に、涙がどんどんあふれてくる。
嗚咽を漏らしている私に、蔵田課長はなにも云わない。

しばらく泣いてすっきりして。
そっと身体を離す。

「落ち着いたみたいだね」

「……ありがとう、ございました」

「うん」

いままで見たことない、優しい笑顔にどきりとした。
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