Rainbow
「実はさ、歌ってみたい歌があるんだよね〜。Blessingを歌いたい!」

千春が言い、莉奈も「いいね!」と言う。響もその歌が好きなので歌いたいと思っていた。しかし、ある問題がある。

「確かその歌、六人でボーカロイドたち歌ってるよな?どうする?俺たち五人しかいないぞ」

響の言葉に「そういえばそうだったね」と千春が言い、莉緒が「どうする?」とみんなを見つめる。すると、冬斗がサラダを食べる手を止めた。

「それなら問題ない。新しくこのRainbowに入れたい人間を見つけた」

「えっ?誰だよ」

響が訊ねると、冬斗はスマホを取り出してYouTubeを開ける。そしてある歌い手の動画を開けた。最近歌い手活動を始めたらしく、投稿されている動画は三つしかない。しかし、ジワジワと再生回数が増えている。

「これがこの人の初投稿動画」

冬斗がそう言い流したのは、性同一性障害の人の歌と言われているヴィランだ。そして、性別のことを話したいけど話せない苦しみが込められた歌声に、胸が締め付けられて心が惹かれていくのがわかる。これ、本当に最近活動を始めた人の歌声なのか、と響の体が震えた。
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