Rainbow
「この人の動画の投稿文、見てみなよ」

冬斗が言い、全員が投稿文に目を向ける。そこには「本当は「私」と言いたい。助けて」と書かれていた。

シンプルな文章だが、響の胸が痛くなっていく。この投稿文をどんな気持ちで考えたのか、その文章の奥にあるSOSを、響は感じ取ることができるのだ。

性同一性障害と言われた時、響はホッとしたと同時に性別のことをどうすべきか悩んだ。悩んで、悩んで、迷って、苦しんで、性同一性障害と言われてから一年後、ようやく両親に話せたのだ。性別を打ち明けられない苦しみを、響は誰よりも知っている。

「この人と、今日の夕方に会う予定だ。みんなも来てよ」

冬斗がそう言い、「勝手にコンタクト取ってたの!?」と光希が呆れ半分驚き半分といった声で言う。響も苦笑したが、内心わくわくしていた。

「この人はどんな人なんだろう……」

心に抱えているものを、少しでも軽くしてあげられたら……、そう思いながら響はコーヒーに口をつけた。
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