瞳の奥
「「警察だ。」」

教会の扉や窓が一斉に開けられ、一瞬で萩原を囲んだ。
この後どうするか解っているのか、皆は銃を萩原に向けたまま私に視線を向ける。

そして、扉の奥から蓮とお兄ちゃんがゆっくり私の元へ歩いてくる。

「萩原、麗奈と話して哀しみの無い世界は作れそうなのか?」

「ふっ、ようやくお前も気づいたのか。」

萩原は蓮に銃を向ける。それに反応するかのように周りを囲んでる警察官達は狙いを定める。
だが、蓮は拳銃を出さない。

「どうした?銃を出さないと死ぬぞ?」

「お前は殺しはしない。この場で殺すと昔、心を救ってくれた麗奈が悲しむからな。」

蓮は優しい微笑みを向け、私の頬にキスをした。

「俺に足りないものは解ったよ。麗奈、後はお前の番だ。麗奈に足りないものの答えを出す時だよ。」

「そうね、その感じだと答えを見つけたようね、安心したわ。」

私はゆっくりと萩原の元へ歩み寄る。

「テロリストの首謀者、萩原恵輔。お前を現行犯で逮捕する。」

私は今までに無い低い声で萩原に言い放ち、萩原の手に手錠をかける。

「総員、奥にユグドラシルのアジトに繋がる階段がある。1人残らず逮捕せよ。」

「「はっ。」」

萩原に銃を向けていた警察官達は、そのまま下へ降りていき、教会には4人だけとなった。

私と蓮は萩原に拘束紐を巻きつける。
部下達がユグドラシルの一員を連行して戻ってくるので、私達はそのまま車に乗せる。
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