瞳の奥
午前中は、朝から捜査会議が開かれ現状の整理と今度の方針を固め、部下達は被疑者の動向を探るべく外周りに出た。

一課には、私と蓮しかいない。
正直とても気まずいが、私はこの空気を無視するかのように部下の報告書を読んでいる。

「なぁ、麗奈。お前に聴きたいことがあるんだけど、今時間大丈夫か?」

時間を見ると11:30を過ぎた頃だった。

「大丈夫だよ、お昼にいつも通り紗綾とご飯食べる予定ぐらいだし。」

「ちょっと来て。」

蓮につられて来た場所は、一課の取調室だった。蓮は苦い顔をしながら席に座るよう促したので、私は奥の椅子に座り、蓮も目の前に座った。

蓮は何か考えていたが、ため息をついてから話始める。

「麗奈、昨日は俺が送ってからずっと家にいたんだよね?」

「そうだよ。寝てたから蓮のメッセージ気づかなかったけど。」

蓮は珍しく泣きそうな顔をしながら、携帯を触り始めた。その理由はすぐに解ることだった。

「このワゴン車に乗ろうとしてる女性、後ろ姿の写真だけど、これ麗奈だよね?」

蓮に見せられたのは、間違いなくユグドラシルの若い男の子に案内されて乗せられている姿が写っていた。

「あとこれ。」

蓮は音声データを流した。それは、昨日晃輝くんの家で、ユグドラシルのボスと電話してた時の物だった。

「そんだけ証拠が集まってるなら逮捕すれば良いじゃない。何が言いたいのよ。」

蓮は立ち上がり、私を後ろから抱き締める。

「そんなことするはずがないよ。でも認めるんだね、ユグドラシルと接触したことに。」
< 88 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop