マリオネット★クライシス
<なんで僕が?>
素知らぬふりで首を傾げたライアンだったが、ふとポケットの中でスマホが震えていることに気づき、何か言いかける男を手で制した。
<ごめん、電話だ。もう切るよ。何か追加報告があれば、また連絡する>
そのまま返事も聞かずに通話をオフにする。
「おまっ……キング相手に何てこと……」
そばでやりとりを聞いていた貴志が呆れた声をあげ、モニター前に座る2人もギョッとしたように固まっていたけれど、フォローするだけのヒマはなかった。
スマホのディスプレイに、待ち望んだ相手の名前が表示されていたからだ。
ようやくオリジナルのスマホに電源をいれたのだろう。
やれやれと微笑み、さっそく画面をタップする。
<やぁ、誰かと思ったら、指名手配中のジェイ君じゃないか>
《っ……っ、っ……》
電話の向こうからは、しばらく荒い呼吸しか聞こえてこなかった。
まるでトライアスロンのゴールを切ったばかりのような、ひどく乱れた呼吸だ。
外にいるのだろう。
周りの雑音もひどい。
一瞬、スマホを盗んだ誰かのイタズラかとがっかりしかけ――
《……ライアン、オレを、探してるんだろ?》
聞き覚えのある声に、ほっと頬が緩んだ。
<おやおや、わかってるなら何か一言、ないのかな? さんざん鬼ごっこに付き合ってやった僕たちにさ?>