マリオネット★クライシス

<なんで僕が?>

素知らぬふりで首を傾げたライアンだったが、ふとポケットの中でスマホが震えていることに気づき、何か言いかける男を手で制した。

<ごめん、電話だ。もう切るよ。何か追加報告があれば、また連絡する>

そのまま返事も聞かずに通話をオフにする。

「おまっ……キング相手に何てこと……」

そばでやりとりを聞いていた貴志が呆れた声をあげ、モニター前に座る2人もギョッとしたように固まっていたけれど、フォローするだけのヒマはなかった。

スマホのディスプレイに、待ち望んだ相手の名前が表示されていたからだ。
ようやくオリジナルのスマホに電源をいれたのだろう。

やれやれと微笑み、さっそく画面をタップする。

<やぁ、誰かと思ったら、指名手配中のジェイ君じゃないか>


《っ……っ、っ……》

電話の向こうからは、しばらく荒い呼吸しか聞こえてこなかった。
まるでトライアスロンのゴールを切ったばかりのような、ひどく乱れた呼吸だ。

外にいるのだろう。
周りの雑音もひどい。

一瞬、スマホを盗んだ誰かのイタズラかとがっかりしかけ――

《……ライアン、オレを、探してるんだろ?》

聞き覚えのある声に、ほっと頬が緩んだ。

<おやおや、わかってるなら何か一言、ないのかな? さんざん鬼ごっこに付き合ってやった僕たちにさ?>

< 267 / 386 >

この作品をシェア

pagetop