マリオネット★クライシス

男だ。

背後から抱き込まれ口を大きな手で塞がれて、ついさっき経験したばかりの息苦しさがフラッシュバックする。

やだやだ……! 一人でフラフラするんじゃなかった!

ぶわっと汗が吹き出して、もうパニックだ。

「っい、やっ……!」

恐怖に駆られたわたしは、めちゃくちゃに暴れて暴れて――

でもそこで、
「しぃっ静かに! ボクだよ!」

聞き覚えのある声を耳が拾い、え、って一瞬動きが止まった。

そろそろと振り返り……
目深にかぶった帽子のつばの下に見知った顔を見つけ、ギョッとする。

ヒナタ君!

私服っぽい、上下とも黒の目立たない恰好だ。
もう帰るところなのかもしれない。

「手、外すけど騒がないでね?」

念押しされて、こくこく頷いて。
手を外してもらい、ようやく口呼吸ができるようになった。

「栞ちゃんさぁ、水臭いじゃん」

胸を押さえて深呼吸を繰り返していたわたしは、なんのことかと甘ったるい声の主を見上げた。

「あんな大物の仕事してるなんて、一言も教えてくれなくてさ」

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