マリオネット★クライシス
湿気と熱気、それから蝉の鳴き声……全身にまとわりつくそれらが、わたしの中から何かを吸い取っていくようだった。
……チリン
刹那。
耳の奥でかすかな音が鳴る。
意識が逸れ、段差でバランスを失った。
ぐらりと身体が傾いて、ヤバい、倒れる! って思った――その時。
後ろから伸びてきた腕に、ガシッと力強く腰を支えられた。
そのまま、驚いて緩んだ猪熊さんの手から引き離され、
わたしの身体は、自分のものじゃない体温に守るように包み込まれていた。
え、これ……って……
「やめろよ、嫌がってるだろ」
頭上で響く凛とした声が鼓膜から伝わって、全身が甘く痺れる。
わたしはジェイに、抱きしめられていた。
「んぁあ? なんだお前は」
「エロオヤジって、こいつ?」
喚く猪熊さんを見事にスルーして、耳元で尋ねるバリトン。
頬にかかる吐息にドキッとしちゃいそうになる自分を叱咤し、「い、いえっ……まさか!」と慌てて首を左右に振る。
すると。
その様子を眺めていた太い直線眉が、みるみる角度をつけていった。