マリオネット★クライシス
「こ……ここ……?」
タクシーを降りて見上げた先にあったのは、閑静な住宅街に建つごくごく一般的なファミリー向けマンションだった。確かに高層階まであるとはいえ、タワマン……って呼ぶのは無理がある佇まい。
もちろん場所が場所だし、家賃はそれなりにするだろうけど。
いくらくらいだろう――って、違う違う、そうじゃなくて!
えーと……わたしたち、ホテルに行くんじゃないの?
「連絡しといたから、すぐ会ってくれる。よかったな」
「会って、くれる??」
こぼれる白い歯に、疑問は深まるばかり。
連絡しといたっていうなら、さっき車内でメッセージのやりとりをしてた相手かな。
でも、それは一体誰?
わたしと何の関係があるわけ?
頭の中はクエスチョンだらけだったけど、ジェイはそんなわたしを置いて、長い足でさっさかエントランスの階段を上っていってしまう。
「ちょ、ちょっと待って!」
エレベーターホールでやっと追いつくと、後ろにくっつくようにしてバタバタ箱の中へ乗り込んだ。