マリオネット★クライシス
「りょーかーい、任せといて。沢木、タクシー呼ばなくてほんとにいい?」
中から別の女性の声が尋ねてるけど、沢木と呼ばれた彼女は首を振る。
「平気平気。まだいろいろ用事あるし」
明るく返して軽く手を振ったその人が、こっちを振り向いた。
う、わ……綺麗な人!
20代、後半くらい?
ゆるふわ系の雰囲気で、“守ってあげたくなる”って言葉がぴったりの華奢な女性がこちらへ歩いてくる。
エアリーなワンピースとルーズなハーフアップヘアが、彼女の空気感によく似合ってて……
そこで、ようやく気付いた。
この人、妊婦さんだ。正面からだとわかりにくいけど、結構お腹おっきい……
こんな美人さんの赤ちゃんだったら、間違いなく綺麗な子になるだろうなぁ。
そんなことを考えながら、なんとなく見つめていたら。
すれ違いざまバッチリ、黒目がちのぱっちりした瞳と視線があってしまい、ヴィーナスみたいな笑顔つきで会釈されちゃった。
アワアワしつつ、こちらも急いでペコリ。
落とした視界の隅に、ワンピースの端がヒラリと掠めた。
その刹那、だった。
……チリン。
「え」