マリオネット★クライシス

微かな音が聞こえた気がして。

弾かれるように顔を上げて、そのまま。
遠ざかっていく後姿から目が離せなくなる。


熱風に膨らむスカート、そして白い太陽。



チリン、チリン……


風鈴が、耳元で鳴った。


映像が揺らぎだす。


真夏のアスファルト上、泡立つ灼熱の蜃気楼のように。


ぐらぐらと――……



「……っ!」


地面が揺れたように感じて、前を行くジェイのシャツを無意識にぐしゃって掴んじゃった。

「ん? どうかした?」

「……うっ、ううん、なんでもない!」

平気そうに返した後で、ビクつきながら振り返る。

そして廊下から彼女の姿が消えていることを確かめると、張り詰めていた息をゆっくり吐きだした。


どうして……突然、思い出したんだろ。


全然、似てないのに。


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