マリオネット★クライシス
「ジェイはリビングで待ってて。んで、ユウちゃんはこっちねー」
ジェイと別れ、わたしが一人案内されたのは、6畳ほどの洋室だった。
ピンクベースの女の子っぽいインテリアだし、旅行中だっていうお友達の部屋だと思う。
「他人が勝手に入って……いいんでしょうか?」
躊躇うわたしを入口に残したまま、「大丈夫大丈夫」って静さんは真っすぐクローゼットへ向かっていく。
「あの子もう一人暮らししてて、ここはあたしの物置と化してるから。あ、どうぞ。見ていいよ」
お言葉に甘えて覗き込むと、クローゼットの中はウォークインタイプになってて奥行きがあり、色とりどりの洋服がかかっていた。
上の棚にはカバンや帽子、床には靴もずらっと並んでて、今すぐお店が開けちゃいそうなくらいの数がある。
わたしだって、普通の女子だ。
この景色を見て、テンション上がらないわけがない。
吸い寄せられるように近寄って、ついつい熱心に見てしまって。
そうして気づいた。これって……
「全部娘さん用の服、ですよね?」
静さんの物置、という割には色やデザインが若めに感じて尋ねると、「わかる?」って彼女は頬をポリポリ。
「あ、全部新品だから、安心してね。撮影で気に入って、買い取ったやつ。つい欲しくなっちゃうんだよねぇ、あの子に似合いそうだなって思うと」
母親の顔を見せて言った後、「でもさぁ」と苦く笑う。
「肝心のあの子が全然着てくれないの。趣味が違うんだって。仕方ないから友達にあげたり、貸したりしててさ」