マリオネット★クライシス

そっか、たぶんジェイはそれを知ってて連絡したんだろう。

確かに服の好みは人それぞれだと思うけど、カリスマスタイリストのチョイスを断るなんて、娘さんも相当大物だなぁ。
わたしなら、喜んで着るけど……。

と手近な一着を手繰り寄せるなり、小学生でも知ってるっていう某有名ブランドのロゴが襟元に見えて、軽く眩暈がした。

「ユウちゃんはどんな感じが好み? デートだっていうから、最初はガーリーな女の子っぽい感じでまとめようと思ってたけど、もっとスパイス効かせてもおもしろいと思うんだよねー。今すっぴんでしょ? ナチュラルに目力あるよね、ユウちゃん。だからそこを生かすって言うか……」

彼女がこちらに背を向けていることを幸い、別の一着、もう一着とチェックするけど、どれもこれも一度は名前を聞いたことあるブランドだらけ……総額いくらだ、ひぇえ……。

「全体モノトーンにしてもいいよね。黒を多めにしてさ」
「し、静さん? えっと、これはちょっと……お借りできないかと」
「え? あ、サイズはいけると思うよ? うちの子も背、高いし」
「いえ、サイズの問題じゃなく、その、お値段が、ですね……」

汚したりしたら、弁償できる自信がない。
勇気を振り絞って告白すると、目を丸くされてしまった。

「まー若いのにしっかりしてんねぇ。うちの子に見習わせたいくらい」

そして、驚くべき台詞を続けたんだ。

「でもお金なら心配しなくていいから。今日ユウちゃんに合わせるものは全部、ジェイが買い取るってことで、あらかじめ話ついてるからね」

「へ……か、買い取る!?」

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