子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 血が出ているから絆創膏を貼っただけなのに、彼女は俺のしたことを救世主が奇跡を施したかのように喜んだ。

 過去にも同じことがあったのだとうれしそうに語り、その時に言えなかった礼を言っていたが、こちらとしては彼女に言った通り、そういえばそんなこともあったとぼんやり思い出す程度の話でしかない。

 だからだろうか、彼女が浮かべた笑みに目を奪われてしまったのは。

 思えば、それまで一度も笑ったところを見ていなかったとその時に気付いた。

 大抵の場合、彼女はうつむいていたし、俺を見る時もどこか不安げで怯えた様子だった。

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