子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 大粒の栗を甘露煮にし、柔らかな求肥でふんわりと包み込んだ、シンプルだからこそ奥深い和菓子である。

 保名さんは私が和菓子を好むと知ると、こんなふうに仕事先――彼の実家とも言う――から毎日のように持ち帰るようになった。

 昨日は葛切りだった。混じりっ気なしの純粋な葛粉のみで作られた本格的なものだ。本来は店に出向かなければ食べられないものだが、私のためにわざわざ持ち帰り用を用意してくれたらしい。

「おまえ、結構甘党だよな」

 ふ、と笑った保名さんが私の手に布袋を握らせる。

 栗餅は小さいはずだが、ずっしりと重い。いったいいくつ持ち帰ってきたのだろう。

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