子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
この場で確認のために広げるのももったいないほど、美しい色留袖だ。
色は肌の色に近い落ち着いた薄いピンク。全体的に無地だが、裾に鶴や花の模様をあしらった扇の柄が付いている。帯も着物の色に合わせ、白をベースに柔らかいピンクで花が描かれていた。
どちらも実家では最高級品に分類されるものだ。
「私なんかに似合うかな……」
「私なんか、って言うな。俺が似合うと思ったんだから、似合うに決まってる」
保名さんは私の頬を軽く引っ張ると、いつも通りお土産の和菓子をテーブルに置いた。
そんな彼と着物とを交互に見つめ、胸が温かい気持ちで満たされるのを感じながら微笑する。