子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 着物の良し悪しがわからないという彼が、私のために選んでくれた事実がうれしかった。

 たとえ最高級品でなくとも、彼が選んでくれたものなら喜んで身に着けただろう。

 私がじんわりと喜びに浸っている間、彼は既に部屋着に着替えていた。

「イベントなんだが、宝来家も参加するそうだ」

 一瞬だけ背筋が冷えるも、素知らぬ振りをする。

「どんなイベントなの?」

「海外に日本の伝統文化を広めるための催し、だそうだ。だからうちとおまえの実家が招待されたわけだな。他にも陶芸家や茶道の家元が呼ばれるらしい」

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