子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「ちょっとぐらいなら……大丈夫、かも……?」

「ちょっとで済ませられないから言ってる」

 ふい、と保名さんが頬を微かに染めて目を逸らした。

 私も恥ずかしくなって彼を見ていられず、うつむいて自身の膝に視線を落とす。

 盛り上がっていた会話が途切れ、外の音が室内に入ってきた。

 しとしとと涼しげな音は雨の降る音だ。

 一年前は狐の嫁入りだと笑われ、私自身もつらい日々の訪れを覚悟して聞いたのに、今はこれが幸せを運ぶ音だと知っている――。

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